── 曜変との出会い、そして研究
中国の南宋時代に作られ、日本に伝世している曜変天目茶碗の内の1碗、静嘉堂文庫美術館蔵の稲葉天目には2回お目にかかる機会がありました。猫足様(ねこあしよう)の斑文と虹彩の変化、凛とした気品を感じる端正な形。その妙に魅せられて、
40年近く新たな発見や感動に出会いながら、自分なりの方法で取り組んでいます。
地元・宮崎の原料を使うこと、特にシラス(火山灰の堆積物)を主原料にした天目釉を作ることにこだわりました。またそのような釉薬が窯変現象を表現するのに最適であることが分かってきました。都城地方でかつて盛んだった“ダルマ窯”による瓦焼成の技術を曜変天目焼成に応用することにも力を入れています。
今まで中国には曜変天目茶碗は1碗もなく、出土もしていないことが不思議ではありましたが、近年南宋の首都である臨安(現在の杭州市)浙江省の皇城の北門近くで、一碗の曜変天目茶碗の残器が出土しました。中国のサイトに掲載された写真を見て、これもまた息をのむ美しさがありました。この出土によってまた新しい曜変天目研究がスタートするであろうと思います。
「曜変、建盞の内の無上也。世上になき物也。…」を目指して、日々研究に努力精進したいと思います。
生楽陶苑 園田一成