What's SLIPWARE? ──西洋生まれ、日本育ちのスリップウェア
泥状に溶いた粘土で生地に文様を描く。集中力をもって一気に描きあげるこの技法は英国で生まれました※。真っ白な磁器がまだ流通していなかった17~19世紀ごろ、一般家庭でパイを焼くオーブン皿として作られていました。パイが焼き上がるとそのまま食卓に運ばれたようです。
スリップウェアと呼ばれるこれらの器は、大量生産品の普及に伴い、徐々に姿を消していきましたが、近年になって日本で再評価されるに至りました。民芸運動によって「用の美」が謳われ始めたとき、イギリスのこのスリップウェアが当時の目利きな日本人の心に響いたのです。
※その起源は紀元前5000年の古代中国・中近東とも言われており、17世紀のイギリスの作風が一般的に広く知られています。
SLIPWARE Now. ──スリップウェアの現在
ヨーロッパ的な風情を持ちながら、どこか素朴さを感じさせるスリップウェアは、日本人にも広く受け入れられています。現在では多くの陶芸作家がそれぞれの個性を生かし、独自のスリップウェアに取り組んでいます。
スリップウェアの人気の秘密は、なんといっても料理が最高に映えることにあります。和・洋を問わず、料理に盛り付けたときに見える柄と器の重厚感が料理を引き立ててくれます。
かつてヨーロッパでは鉛を使用したガレナ釉が使用されており、それが独自の風合いを出していたのですが、現在の日本では健康被害への配慮から、鉛を使用した釉薬の多くが禁止されています。日本で作られているスリップウェアは、ガレナ釉の代わりに飴釉(あめゆう)が使用されていることが多いようです。
How is KuuSLIPWARE? ──天然原料にこだわったスリップウェア
自然との調和を大切にしたいという思いから、生楽陶苑のスリップウェアは天然の原料を使用することにこだわっています。工房も小川のすぐ横、自然の中にあるので、澄んだ空気が器に染み込んでいくようです。
スリップウェアのスリップとは日本語で化粧土という意味です。
スリップウェアの最大の特徴である表面を覆う化粧土には地元・宮崎で採れる原土を使用。釉薬には天然の木灰をベースにしたものを使用しています。
自然のものだから安心して使えて、さらに自然のやさしさが感じられるものに仕上がっています。
How is the design? ──デザインへのこだわり
スリップウェアにしか出せないオリジナルの文様に力を入れています。中でも一番人気があるのは写真の花紋様です。
また、イギリスのスリップウェアの伝統的な文様(フェザーコームなど)や日本の伝統柄などもデザインに取り入れています。いっちんと呼ばれるスポイトのようなもので、一つひとつ文様を描いていくので、同じ文様でもそれぞれ微妙に異なる表情をもっています。
形やサイズにもこだわり、試作を繰り返した上で、使いやすくてシンプルなフォルムを選びました。重ねがきくので収納性も抜群です。一般的なスリップウェアというと飴色が多いのですが、グリーンやブルーなど明るい色の釉薬も使用してバリエーションを増やしています。
料理を盛る表面には釉薬が掛かりガラス質でコーティングされているので、洗いやすく、お手入れも簡単です。裏面は土肌が見えるので土の温かみが感じられるのと同時に、表面のツルツル感との対比が面白い仕上がりになっています。
KuuSLIPWAREは電子レンジにも対応しています。直火とオーブンは不可です。
作家の名前、空也(くうや)からkuuという刻印を裏面に入れてあります。
Process スリップウェアの制作工程──手作りへのこだわり作家が一つひとつ心を込めて手作りしています。
全ての工程を終えて完成するまで約一ヶ月ほどかかります。
- 粘土をしっかりと菊練りする
- たたら状に粘土をカットする
- 表面全体に化粧土をかけ、いっちんで素早く文様を描く
- 一晩ねかせて、表面が手につかないくらいまで乾かす
- 押し型に当てて成型する(平皿の場合、手で縁を上げる)
- さらに乾いたところで縁を削って仕上げる
- 時間をかけて完全に乾燥させる
- 窯詰めし、ゆっくりと温度を上げて約800℃で素焼きをする
- 素焼きした器の埃を落とす
- 裏面と縁に下処理をして、釉薬をかける
- 窯詰めし、約1200℃の高温で本焼きをする
- 約2日窯を冷まして取り出す
- 底をサンドペーパーで擦って滑らかにする
- 表面に撥水の処理をしたら完成