Somewhere over the rainbow Way up high There's a land that I heard of Once in a lullaby
虹の向こうのどこか空高くに、子守歌で聞いた国がある
モノクロの映像の中で、夢見るドロシーは 空に浮かぶ虹を見て、「きっとあの虹の向こうには、希望と幸せがあるに違いない・・」と歌をつづける。
何度この映画を見ても、いつもここで私の心は「がしっと」掴まれる。
虹とガーランドの歌声が電流となって私の背中を走る。
虹は古今東西を問わず、希望と幸せの象徴なのだろう。
今 私の目の前に虹を纏った一杯の盃がある。
生楽陶苑の園田一成氏の作品「白砂天目の盃」である。
園田さんは曜変天目に心を掴まれた作家だ。
自らの手でレンガを積み釜をつくり、地元のシラス、藁灰、木灰を釉薬として用い、日々試行錯誤をくり返している。
白砂天目盃を手に取り、右に左にゆっくりと傾けてみる。
盃は揺れるたび、様々な輝きを見せる。
手で触れる外がわ、口にふれる縁は鬱金色から黄檗にうつり、菫色が盃を手に持つことを誘い、口を触れることをいざなう。
盃の内側に目を落とすと、紅色から猩々緋色、黄檗色、萌葱色と移ろい、底に若草色を漂わせる。
白砂天目盃に酒を注いでみる。 酒は純米吟醸に限る。
注がれた酒のふくよかな香りと揺らぐ盃の虹色が私を誘う。
虹は人を魅きつける。
空の虹。
その彼方にドロシーは希望と幸せをみた。
空にはない。
盃の中に浮かぶ虹。
その虹を見た人は彼方に何を想うだろう